びふぉーあふたー

つい先日、リフォームをテーマにした、番組が放送終了をむかえました。

この番組は、14年もの長き期間放送されておりました。
放送開始時代、「リフォームブーム」も背景にあり、高視聴率であった様に記憶あります。
当時お客様より、番組を教えられ、視聴しはじめる事となりました。

当時、よくあったご相談は、「300万円でリフォームしたい。」といった案件です。
「こんな風なリフォームを・・・」と番組の録画を持ち込まれ、
「これで400万円で、できるなら・・」
「ここまでとは言わないが、400万円は厳しいけれど、300万円まで位で・・・」と・・・

(人の心理なのか、一般的家庭の"基準"なのか、
やたら"300万円"と言うお客様が、当時は、かなり多かった印象があります。)

みれば、"水回りのリフォーム"だけ。等ではなく、居室・寝室・玄関 etc.(フル改修!?)
まともな建築屋が見れば、「できない」金額である。

映像に写っている、(設置導入されている)便器ひとつとっても、
〇〇メーカーの、〇○モデル、ウォシュレットタイプは、恐らく○○がついてるな。。
当然、メーカー希望価格もわかれば、納入価格も察しがつく。

バスルームだって、キッチンだって・・・設備以外も、
土台・大引き・根太・柱材、見れば、木の種類だって分かるし、質も、価格も察しつく。
レイアウト・坪数から、基礎屋何人・何日、大工何人・何日、建具屋、設備屋、内装・・・
人工代も想像・積算できる。当然解体代も、処分代も・・・

ある意味当然、映像確認できる範囲で、「見積り可能」なのですが、
どう計算してみても、「できない」のです。

資材・建材・設備通通であっても・・・
最終的、職人1人当たり、日当2,000円でも!? 出来ない!! そんなケースでした。

どんな、"カラクリ"があるのか・あったのかは、
TV業界人ではありませんので、正確には、わかりません。

いわゆるタイアップ。宣伝効果をアピールし、"メーカー協賛"をしてもらったのか・・・
それは、建材・設備メーカーのみならず、設計士、工務店にも・・・

真相は、当事者のみが知りうる事なのでしょうが、
同じ金額で、"できない" 事、「力不足で申し訳ありません。」と、
自ら "?" マークを心に持ちながら、そして、
詫びる事自体も "?" マーク "なぜ、私が謝らなくてはならないのか" を持ちながら、
お客様に頭を下げていた記憶があります。

「TVの力って、やっぱり凄い」そう実感するものでした。

どれだけ説明しても、「TVでやっていたのだから、できるはずだ!!」
TVが、「嘘を放送するわけはない!!」「ネットじゃないんだから・・・」

当初は、"嘘つき"にならない為に、メーカーカタログを全て用意し、
ビデオを"一時停止"し、「ほら、この商品ですよね。」とお客様に確認してもらい、
卸価格(裸原価)を開示し、ひとつひとつづつ納得して頂く努力を行ってたのですが、

その説明資料(メーカーカタログ、相見どり、他)を用意する時間・手間が膨大であり、
さらには、1.資材全て同じ。2.資材同用途別材。3.予算内施工可能範囲と、
それぞれの見積り作成を求められました。
(見積り作成のための粗設計・施工計画は当然無ければ見積りできないので、
それぞれ下地設計・計画書をつくる事も当然行わなければならない。)

あげく、

「そんなにかかるんだ」「資材グレード落としても、やっぱり結構な金額」
「希望資材でやったら、便器交換と、ユニットバスへ交換だけしかできない・・・」

そして、
「予算300万円しかないので、今回もう少し考えます。」
「やはり、資材最低グレードにはしたくないので、もう少したまってから」
「1階全リフォームにするか、改築にするか、少し考えてみます。」等

「今回は、親切ににいろいろ教えて下さって、本当にありがとうございました。」
の言葉とともに、お帰りになられる事多い時代でした。

時代の流れとともに、
この番組において、"内装材"に変化がみられる様になっていきました。

「杉材が多いな。。」

「エコ」「天然自然素材」「ナチュラル」と聞こえよい言葉を番組は強く連呼、発し、
「自然を活かした床材」「木目を活かした」「節目もかわいい」等と、
壁も、床も、"無垢杉板"が多く登場していました。

「ああ、金がないのだな。」
普通の建築屋であれば、第一に、大抵そう思うでしょう。
「ん!? それとも、お施主さんは、定期的に張り替え行える・・・意外にお金持ち??」
と次に考えますが、番組性質上、「きっとそれは無い。」

地球環境を考え、"すぐ育つ" 杉を "あえて" 使う・・
経年変化で、隙間が開いても、穴が開いても、ところどころ色が変色しても、
汚れ染み着き、落とす事できなくても、板材自体が、パッカリ割れてしまっても、
朽ち落ちするまで使い続ける「超エコロジストのお施主様」
番組出演している姿から想像するお施主様・・・「きっとそれは無い。」

杉は、ご存じの通り、「比較的成長が早く、まっすぐに成長する木」であり、
当然、「成長が遅く、直線的に成長しない木」に比べ、建築資材にする上では、
"杉材" は、効率的であり=(イコール)安価。である事事実ですが、

「垂直方向に生えない小枝は、直ちに切り落とし、ひたすら真直ぐに成長させる」
「表皮付近節あり部でも、幹としては真直ぐなので、建材として長尺ものとれる」

成長が早い分、「年輪間隔は広い。」
「堅い年輪部分が密となっていない分、横方向には柔軟」
「横方向に弱いが、垂直方向にはある程度、耐力がある。」>>安い柱材としては有効。
「やわらかい部分・堅い年輪部分の広い間隔のため、収縮・膨張変化が大きくある。」
湿度コントロールに優れているので、畳した床材に適当。
「油分が多く防水効果が期待できる。(杉皮)」>>屋根材に・・・etc.
杉の様々な「良い点・悪い点」ありますが・・・古来有効な"利点"であっても、

毎日の現代生活の中で考えると・・・

施工直後は、板目きっちりとしていても、日々湿乾燥繰り返し、膨張伸縮にて、
後々材料単板つき合わせ目地が、どんどん"隙間"が開いていき、想像以上の
おおきな隙間が開き、ゴミ・埃たまりとなる。

一見 "風合い" 的に思えていた「ふし」がいつのまに脱落し、"ふし穴" となり、
小さなお子さんは、指を突っ込み怪我をするだけでなく、
害虫の侵入経路となる場合も・・・

又、汚れ吸着が激しく、"毎日の拭き掃除" を行わなければ、美しさを保てない。

これらを理解・分かっていたら・・・日々生活する"一般住宅"においては、
ほとんどのお施主様は「絶対ムリ!!」と云うのではないでしょうか。

果して、この番組において施工されている各お宅は、
然様の説明を受けて、納得の上施工されているのか、
「予算不足にて」苦渋決断の上なのか・・・

その他にも、石膏ボード仕上がり(壁紙クロスなし)なんてものもあったが・・・
果して番組の云う「匠」は、本当に"良し"として施工した結果なのだろうか?

これから「お施主様」になろうとしている方々には、今一度、申し上げたい事は、
「メディア」の情報を "鵜呑み" にする姿勢は大変危険であり、その危険を認識頂き
自らも勉強して頂き、信頼できる施工者を見つける事が出来る、
お施主様になって頂きたいと思います。


2016年11月10日